化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる用語などの解説をしています。
今回は物理化学、化学熱力学の中からラウールの法則とヘンリーの法則というテーマを扱っていきます。
ラウールの法則(Raoult’s law)
今回はラウールの法則について説明します。
ラウールの法則は、結論からいうと次のような式で表されます。
最初のは、混合溶液におけるAの蒸気圧であり、その後のは、Aの純粋なときの蒸気圧である。
そして、はAのモル分率です。
また、次のように式を書きなおすと、純粋なときの蒸気圧と混合したときの蒸気圧の比はモル分率と等しくなることがわかります。
ラウールの法則が成立するとき
ラウールの法則が成立するのは、分子間力が比較的すくない希薄溶液の場合です。
つまり、溶媒が純粋に近い状態であるとき、に限りなく近づくときに成立すると考えます。
また、このラウールの法則が厳密に成立すると仮定した混合溶液を理想溶液と言います。
混合溶液の場合、よく似た構造の分子が混合されるときに理想溶液に近くなります。
ヘンリーの法則(Henry’s law)
ラウールの法則とよく並べて書かれるのはヘンリーの法則です。
ヘンリーの法則は次のように表されます
さきほどのラウールの法則の式とよく似ていますね。
先ほどのラウールの法則で純粋な蒸気圧の部分が定数になっています。
ヘンリーの法則は溶質についての蒸気圧の関係です。
この法則は溶質のモル分率が小さいときに成り立ちます。
つまり、のときに近づきます。
ラウールの法則とヘンリーの法則のまとめ
ヘンリーの法則とラウールの法則についてまとめます。
名称 | 数式 | 説明 |
---|---|---|
ラウールの法則 | 主に溶媒に関して、のときによく成り立ちます。 この法則を満たす溶液を理想溶液といいます。 |
|
ヘンリーの法則 | 主に溶質に関して、のときによく成り立ちます。 溶媒がラウールの法則を満たし、溶質がヘンリーの法則を同時に満たす溶液を理想希薄溶液といいます。 |
大学院試験対策におすすめの参考書
最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。
本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。
実際に大学院試験に出題された問題を見たいという方はこれらの参考書を使って対策をすることをおすすめします。
おすすめの無機化学参考書
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。
例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。
例題に対して解説の分量が多く、とても丁寧な書き方がされているので、いきなりこの問題集を使っても問題なさそうです。
おすすめの物理化学参考書
アトキンス物理化学
アトキンス物理化学(上)
アトキンス物理化学(下)
アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。
マッカーリサイモンの物理化学の参考書とよく比較されますが、私個人としては、こちらの方が図表がきれいに並べられているため見やすいと感じています。
また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。
ただし、アトキンス物理化学 第10版の演習問題の解答は別冊になっており、とても高価です。
アトキンス物理化学第10版の解答はこちら
さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。
そのときには、下の参考書を使うとよいでしょう。
物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
アトキンス物理化学の演習問題の答えがないときには、こちらの物理化学演習の参考書を買うのも一つの手でしょう。
こちらは例題と解答がセットで並んでいるため、効率よく問題演習に取り組むことができます。