【大学院試験対策】クラウジウスの不等式とは何か。

化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうるキーワードや用語について解説していきます。

今回は物理化学、化学熱力学の中からクラウジウスの不等式というテーマを扱っていきます。

クラウジウスの不等式とは何か。

クラウジウスの不等式とは？

結論から言うとクラウジウスの不等式は次のように表されます。

$\huge dS-\frac{dq}{T}≦0$

このクラウジウスの不等式は熱力学第二法則の数学的な説明と言われています。

今回はこの式について詳しく考えてみましょう。

補足　熱力学第二法則の表現

熱力学第二法則の表現は色々な表現がありました。その一部を次の表にまとめておきます。

クラウジウスの不等式の導出

それでは、導出から考えていきましょう。

導出は至って簡単です。

内部エネルギーが状態関数であることを用います。

とある不可逆反応(irreversible reaction)について

$dU=dq_{irr}+dw_{irr}$ (熱力学第一法則)

内部エネルギーが状態関数であ李、その反応経路にはよらないので、可逆過程(reversible reaction)での変化であると考えると、

$dU=dq_{rev}+dw_{rev}$

これら二つの式から内部エネルギーは共通であるので

$dq_{irr}+dw_{irr}=dq_{rev}+dw_{rev}$

変形させると、

$dq_{irr}-dq_{rev}=dw_{rev}-dw_{irr}$

ここで、不可逆反応での仕事は可逆反応における仕事よりも一般に大きいので、$dw_{rev}<dw_{irr}$

よって、$dq_{irr}-dq_{rev}=dw_{rev}-dw_{irr}<0$

つまり、

$dq_{irr}-dq_{rev}<0$

ここまでくればもう大丈夫だと思います。

エントロピーの定義から

$dS=\frac{dq_{rev}}{T}>\frac{dq_{irr}}{T}$

つまり、これらの議論から求めたいクラウジウスの不等式が得られます。

$\huge dS-\frac{dq_{irr}}{T}≦0$

可逆反応のときのクラウジウスの不等式

可逆反応のときのエントロピーの変化はそのときやりとりされた熱qを用いて

$\huge dS=\frac{dq_{rev}}{T}$

と表されました。($q_{rev}$の下付き文字revは、可逆反応(reversible reaction)の最初の三字をとったものです。)

これは、クラウジウスの不等式において等号が成立している場合です。

つまり、可逆反応ではクラウジウスの不等式は等号が成立し、不可逆反応では等号が成立しないことになります。

自発過程でのクラウジウスの不等式

自発過程ではクラウジウスの不等式が活躍することになります。

なぜなら自然におきる全ての自発過程は不可逆反応になるからです。

ですからクラウジウスの不等式はその自発性について考察する上で非常に大切な概念になります。

まとめ

・クラウジウスの不等式は次のように表される。

$\huge dS-\frac{dq}{T}≦0$

・クラウジウスの不等式では可逆過程の時に等式が成立する。

・自発過程は、基本的に不可逆反応になるので、クラウジウスの不等式が重要になる。