化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうるテーマや用語について説明します。
今回は無機化学分野の中から常磁性と反磁性というテーマを扱っていきます。
三つの磁性体
磁性体は、反磁性体・常磁性体・強磁性体の3つに分けられます。
今回はそのうち、常磁性と反磁性についてみていきましょう。
この記事を読めば
・常磁性と反磁性の違いの判断の仕方
・常磁性と反磁性となる分子の例
・常磁性と反磁性での磁化率の違い
がわかるようになります。
ぜひ最後までご一読ください。
常磁性と反磁性の違いとは?
結論から言うと、分子の常磁性と反磁性の違いは不対電子の有無で決まります。
この不対電子というのは、分子軌道を考えたうえで電子を配列したときの結果です。
分子軌道法(MO法)について復習が必要な方はみなおしておきましょう。
常磁性の例
酸素分子(O2)
酸素の分子軌道を書くと以下の図のようになります。
2p軌道からなる酸素分子(O2)の反結合性軌道のπ軌道には、不対電子が2つ存在します。
この不対電子のスピンが磁気モーメントをつくります。
これが、常磁性を帯びる原因になります。
反磁性の例
窒素分子(N2)
常磁性と反磁性での磁化率の違い
そもそも磁化率って?
磁性を帯びる可能性がある物質に磁場をかけると磁性体が分極して磁石のようになります。
このような現象を磁化といい、磁化のしやすさを磁化率といいます。
この磁化率が大きいと、磁場へとひきつけられやすくなります。
この磁化率が”常磁性”か”反磁性”かによって異なってきます。
磁化率は、外部磁場Hと磁化Mを用いて以下の式であらわせます。
$$\chi=\frac{M}{H}$$
※\(\chi\)は”カイ”と読むギリシア文字です。
常磁性体と反磁性体での磁化率のちがい
結論から言うと、このとき
常磁性体:\(\chi>0\)
反磁性体:\(\chi<0\)
となります。
つまり、
常磁性体は磁場に引きつけられるのに対して、反磁性体は磁場から遠ざかるということです。
まとめ
今回の内容は、シュライバー・アトキンス無機化学(第6版)を参考に執筆しています。
無機化学のおすすめの教科書などはこちらのページにまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。
無機化学の教科書 シュライバー・アトキンス無機化学 → シュライバー・アトキンス無機化学 (上) はこちら シュライバー・アトキンス無機化学は、東京化学同人から出版されている無機化学の教科書です。 多くの大学で使わ[…]
最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。
本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。
実際に大学院試験に出題された問題を見たいという方はこれらの参考書を使って対策をすることをおすすめします。
おすすめの無機化学参考書
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。
例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。
例題に対して解説の分量が多く、とても丁寧な書き方がされているので、いきなりこの問題集を使っても問題なさそうです。
おすすめの物理化学参考書
アトキンス物理化学
アトキンス物理化学(上)
アトキンス物理化学(下)
アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。
マッカーリサイモンの物理化学の参考書とよく比較されますが、私個人としては、こちらの方が図表がきれいに並べられているため見やすいと感じています。
また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。
ただし、アトキンス物理化学 第10版の演習問題の解答は別冊になっており、とても高価です。
アトキンス物理化学第10版の解答はこちら
さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。
そのときには、下の参考書を使うとよいでしょう。
物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
アトキンス物理化学の演習問題の答えがないときには、こちらの物理化学演習の参考書を買うのも一つの手でしょう。
こちらは例題と解答がセットで並んでいるため、効率よく問題演習に取り組むことができます。