化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる大事な用語やキーワードの説明や導出をしています。
今回は物理化学、化学熱力学の分野の中から電解質溶液の移動というテーマを扱っていきます。
このテーマでは電解質移動の程度を表す伝導率の定義と、それに続いてコールラウシュの法則を扱います。
電解質溶液の移動
溶液中の電荷を帯びた化学種は、その試料に電位差をつくることによって強制的に動かすことができます。
この電荷の移動を観察することで分子運動について理解することができます。
イオンの運動は、コンダクタンスをもちいて表します。
コンダクタンスとは電流の流れやすさを表すもので、
直流回路では電気抵抗の逆数、交流回路ではインピーダンスの逆数の実数部のことを言います。
溶液に電流を流すときのコンダクタンス()は試料のセルの長さ()と面積()に依存します。式で表すと次のようになります。
ここでκという記号は電気伝導率です。(はカッパと読みます。)
また溶液の伝導率は溶液中に存在する分子数にも依存します。
電気伝導率をモル濃度で割ったものをモル伝導率といいます。そのときという文字がつかわれます。(はラムダと読みます。)
このモル伝導率は濃度に依存するので、たとえば溶液に加えたものが強電解質か弱電解質かで、その伝導率が大きく変わることになります。
なぜなら強電解質は、加えた分すべて電離することになり、濃度もそれに依存して直線的に増えることになります。
弱電解質の場合には電離するイオンの数もその電離度によるので加えた濃度と実際の濃度は一致しないことになります。
コールラウシュの法則(Kohlrausch law)
強電解質のモル伝導率に関してコールラウシュの法則(Kohlrausch law)が知られています。
コールラウシュの法則は次の二つの事柄を含んでいます。
○ イオン独立移動の法則
○ コールラウシュの平方根則
それぞれについて一つずつ説明していきます。
○ イオン独立移動の法則
イオン独立移動の法則は無限希釈という極限についての法則です。
無限希釈とは濃度がほとんど0になるという仮定のことです。(c→0)
この無限希釈のモル伝導率が電解質の個々のイオンの伝導率からの寄与の和で表すことができるという法則です。
この式のλはそれぞれカチオンとアニオンの無限希釈での伝導率を示しており、はそれぞれ電解質内のイオンの量的関係を表しています。例えば、なら,となります。
○ コールラウシュの平方根則
=
コールラウシュの平方根則は、低濃度の強電解質において、濃度の平方根に対して直線的に伝導率が変化していくという法則です。
これは、コールラウシュが実験的に発見したもので、このとき、は、コールラウシュ定数と呼ばれています。
上記の式では、無限希釈でのモル伝導率を用いて書かれていますが次のように書くこともできます。
実際にはこちらの式を使うことの方が多いかもしれません。
まとめ
最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。
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無機化学演習 大学院入試問題を中心に
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物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
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