化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる大事な用語やキーワードの説明や導出をしています。
今回は物理化学、化学熱力学の分野の中から分子の平均エネルギーと分配関数
分子の平均エネルギーと分配関数
分子の平均エネルギーを分配関数で表す
分配関数は熱力学で大事な情報を含んでいます。
そのうちのひとつに、分子の平均エネルギーがあります。
分子の平均エネルギーは<ε>と表されますが、
定義から
です。
これを分配関数を用いて表すことを考えます。
そのために、ボルツマン分布を用います。
また、分子にあるは、微分を用いることで次のようにあらわされます。
これを用いて書き換えると
であるので、最終的に分子の平均エネルギーは
というシンプルかつ分配関数だけの形で表現することができるようになりました。
しかしながら注意しないといけないのは、このとき、分配関数を求める段階で、エネルギー準位の基準を定めた相対的なものになっています。
普通は、基底状態をとしていますが、もし仮に基底状態がというように0でない場合には平均エネルギーもだけ加算しなければいけません。
各運動モードによるエネルギーへの寄与
つぎに、分配関数への寄与が各運動モードの分配関数の積で表されたように、
今回はエネルギーに対する各運動モードからの寄与を考えていきます。
このときもさきほど求めた分子の平均エネルギーの式が使えます。
このqに各運動状態での分配関数を代入することで得ることができます。
今回は結論だけかきます。
もちろん分子の対称性や絶対温度などにも依存するので、そのときに応じて、の式を用いて分配関数を微分して求めることが必要です。
運動状態 | ||
---|---|---|
並進(1次元) | ||
並進(3次元) | ||
回転 | 直線形分子, は振動特性温度 |
|
振動 | ||
振動 |
まとめ
・分子の平均エネルギーはと表せる。
・この式を用いて各運動に関しての分配関数からエネルギーへの寄与を考えると、次の表のようになる。
大学院試験対策におすすめの参考書
最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。
本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。
実際に大学院試験に出題された問題を見たいという方はこれらの参考書を使って対策をすることをおすすめします。
おすすめの無機化学参考書
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。
例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。
例題に対して解説の分量が多く、とても丁寧な書き方がされているので、いきなりこの問題集を使っても問題なさそうです。
おすすめの物理化学参考書
アトキンス物理化学
アトキンス物理化学(上)
アトキンス物理化学(下)
アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。
マッカーリサイモンの物理化学の参考書とよく比較されますが、私個人としては、こちらの方が図表がきれいに並べられているため見やすいと感じています。
また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。
ただし、アトキンス物理化学 第10版の演習問題の解答は別冊になっており、とても高価です。
アトキンス物理化学第10版の解答はこちら
さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。
そのときには、下の参考書を使うとよいでしょう。
物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
アトキンス物理化学の演習問題の答えがないときには、こちらの物理化学演習の参考書を買うのも一つの手でしょう。
こちらは例題と解答がセットで並んでいるため、効率よく問題演習に取り組むことができます。