化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる大事な用語やキーワードの説明や導出をしています。
今回は物理化学、化学熱力学の分野の中から各運動モードの分配関数への寄与
各運動モードの分配関数への寄与
分配関数の因数分解
分配関数(Partition function)の因数分解とは、分子の各運動自由度についての分配関数の各寄与の積によって分配関数を表現することです。
このことは言葉で説明するよりも具体的に数式で見たほうが分かりやすいでしょう。
これは、それぞれの寄与を別々に考えてもいいことを意味しています。
それぞれの運動状態がほかの状態に依存しないことは、量子化学の内容を通して理解することができます。
並進運動の分配関数への寄与
結論からいうと、並進運動の分配関数への寄与は次のように表されます。
ただし、ここでAは熱的波長( thermal wavelength)あるいは、熱的ド・ブロイ波長( thermal de Broglie wavelength)というもので、Vは体積です。
体積は言わずもがなですが、ここでは、三次元の箱のなかで分子が運動していることを仮定しています。
熱的波長とは、粒子の量子力学的な広がりの度合いを示すものです。
簡単に言うと、この熱的波長の大小で量子力学で扱えるか、古典力学で扱えるかが変わります。
熱的波長は、次のように表されます。
ただし、はボルツマン定数であり、はプランク定数である。
回転運動の分配関数への寄与
回転運動の分配関数を考えるときには、それらの分子が直線形であるかどうかを考えなければいけません。
結論からいうと、
直線形の分子では、分配関数への寄与は
となります。
これは、非対称直線分子のエネルギー準位が、
で与えられていることから近似的に求められるものです。
また非直線形の分子では、
となります。
直線形、非直線形それぞれに対して対称数というものを導入します。
この対称数でそれぞれを割ると、結果として次のようになります。
振動運動の分配関数への寄与
振動運動での分配関数への寄与は次のようにあらわされます。
これは、振動を調和振動であると仮定しています。
調和振動のエネルギーは、次のようにあらわされ、
となり、エネルギー差は等間隔になります。
これによって、分配関数はエネルギーが非縮重かつ等間隔になるときのものとおなじように考えることができるため、
であると言えます。
まとめ
参考サイト・参考書籍
○鈴木彰・藤田 重次「統計熱力学の基礎」
○A.Isihara「統計物理学」
○清水 明「統計力学の基礎(執筆中断中の易しいバージョン)」
清水明様の研究室のサイトに公開されているものです。
https://as2.c.u-tokyo.ac.jp/lecture_note/statmech.pdf
○Kerson Huang「Statistical Mechanics (2nd edition)」(1987)
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大学院試験対策におすすめの参考書
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おすすめの無機化学参考書
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
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アトキンス物理化学
アトキンス物理化学(上)
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物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
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