化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる大事な用語やキーワードの説明や導出をしています。
今回は物理化学、化学熱力学の分野の中から正準アンサンブル(正準集団)というテーマを扱っていきます。
正準アンサンブル(正準集団)
正準アンサンブル(正準集団)は、カノニカルアンサンブルともいわれます。
canonicalとは、「規準的な 標準的な」を意味する英語です。
まずは、正準アンサンブル(正準集団)についてwikipediaによる定義をみてみましょう。
正準集団とは、統計力学において、外界との間でエネルギーを自由にやり取り出来る閉鎖系を無数に集めた統計集団である。
出典:wikipedia 正準集団 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E6%BA%96%E9%9B%86%E5%9B%A3
また、違うサイトにはつぎのように書いてありました。
熱的に平衡状態にある分子,原子などの粒子の集合で,粒子の数Nが一定で温度Tが一定の状態にある統計集団をいう.統計熱力学的に標準なもので標準集合(集団),正準集合(集団),カノニカル集団ともいわれる.
またアトキンス物理化学第10版(下)にはつぎのように書かれています。
正準アンサンブルは、着目している系の複製多数からなる仮想的な集団で、元の系と同じ温度に保たれている。
出典:アトキンス物理化学第10版(下)
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これらの記述を参考にすると、正準集団(正準アンサンブル)とは、粒子数や温度が一定の状態で固定された系が多数存在するとしてそれらを総合的にみたものということが言えます。
これは、分子の相互作用を考えるために必要なことです。
つまり今までは系を単体として見ていたのを、系がたくさん集まったと仮定してそれらを統計的に扱うということです。
そこで、今まで単一の系で考えていた分配関数やボルツマン分布をこの多数の系で一度に考えます。
正準分配関数
正準と頭についただけで求めるものは変わらず、次のように表されます。
ここではそのアンサンブルの全エネルギーとなります。
全エネルギーは変化しないのではないかと思うかもしれませんが、ここでは、アンサンブルの間でごく微小に熱が移動していると考えているのです。
正準分布と系の平均エネルギー
こちらもアンサンブルの全エネルギーをとして、アンサンブルの総数が
としたときに、そのときのアンサンブルの総数に対する特定の全エネルギーを持つアンサンブルの数の比を表したものが正準分布になります。
またこの式から系の平均エネルギーが求められ、つぎのようになります。
また、次のページのやり方で微分の形できれいに変形でき、
https://daigakuchem.com/energy/
結論だけかくと、
のようになります。
まとめ
それでは、最後に正準集団(正準アンサンブル)について簡単にまとめます。
まとめ | |
---|---|
正準集団 | 正準集団とは、粒子数や温度が一定の状態で固定された系が多数存在するとしてそれらを総合的にみたもの |
正準分配関数 | |
正準分布 | |
系の平均エネルギー |
↓こちらは画像でまとめたものです↓
ご自由にお使いください。
大学院試験対策におすすめの参考書
最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。
本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。
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無機化学演習 大学院入試問題を中心に
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こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。
例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。
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おすすめの物理化学参考書
アトキンス物理化学
アトキンス物理化学(上)
アトキンス物理化学(下)
アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。
マッカーリサイモンの物理化学の参考書とよく比較されますが、私個人としては、こちらの方が図表がきれいに並べられているため見やすいと感じています。
また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。
ただし、アトキンス物理化学 第10版の演習問題の解答は別冊になっており、とても高価です。
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さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。
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物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
アトキンス物理化学の演習問題の答えがないときには、こちらの物理化学演習の参考書を買うのも一つの手でしょう。
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