【大学院試験対策】状態関数と分配関数

化学熱力学, 大学院試験

化学熱力学

化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる大事な用語やキーワードの説明や導出をしています。

今回は物理化学、化学熱力学の分野の中から状態関数と分配関数というテーマを扱っていきます。

1 状態関数と分配関数
- 1.1 内部エネルギーと分配関数
- 1.2 エントロピーと分配関数
  - 1.2.1 重みの対数表示からの変形
  - 1.2.2 エントロピーの分配関数による表現
2 まとめ
3 大学院試験対策におすすめの参考書
- 3.1 おすすめの無機化学参考書
  - 3.1.1 無機化学演習　大学院入試問題を中心に
- 3.2 おすすめの物理化学参考書
  - 3.2.1 アトキンス物理化学
  - 3.2.2 物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)

状態関数と分配関数

分配関数は、熱力学的な関数と強いつながりがあります。

内部エネルギーと分配関数

分子の平均エネルギーは分配関数を用いて次のように表されます。

$〈ε〉=-\frac{1}{q}(\frac{\partial q}{\partial β})_V$

参考：【大学院試験対策】分子の平均エネルギーと分配関数　https://daigakuchem.com/energy/

ここから内部エネルギーについて考えていきます。

N個の分子からなる系では全エネルギーは平均のエネルギーにNをかけたものであると考えられます。

しかし、エネルギーは相対的なものであるので基底状態のエネルギーをU(0)であると考えて、

$U(T)=U(0)+N〈ε〉$

すなわち、

$U(T)=U(0)-\frac{N}{q}(\frac{\partial q}{\partial β})_V$

となります。

エントロピーと分配関数

エントロピーは、「配置と重み」のときに学習した事柄と深くかかわっています。

エントロピーは、その系で最も起こりうる配置の重み $W$ を用いて次のように表されます。

$S=k\ln W$

この式を分配関数を用いて表していきます。

このとき、配置と重みでみたスターリングの近似を用いて表した重みの対数表示を利用して計算して求めていきます。

$\ln W=NlnN−\sum\limits_{i} N_ilnN_i$

重みの対数表示からの変形

$\begin {align}\ln W&=NlnN−\sum\limits_{i} N_ilnN_i\\ &=\sum\limits_{i}N_ilnN−\sum\limits_{i} N_ilnN_i \\ &=\sum\limits_{i}N_i(lnN−lnN_i) \\ &=-\sum\limits_{i}N_i\ln\frac{N_i}{N} \\&=-\sum\limits_{i}N_i\ln\frac{e^{-βε_i}}{q}\\ \end {align}$

これをエントロピーの式に代入すると、

エントロピーの分配関数による表現

$\begin {align}S&=k\ln W\\ &=-k\sum\limits_{i}N_i\ln\frac{e^{-βε_i}}{q}\\ &=-k\sum\limits_{i}N_i(-βε_i-\ln q) \\ &=βk\sum\limits_{i}N_iε_i+k\sum\limits_{i}N_i\ln q \\&=βkN〈ε〉+Nk\ln q\\ &=\frac{(U(T)-U(0))}{T}+Nk\ln q\\ \end {align}$

最後の変形には、 $N〈ε〉=U(T)-U(0)$ と $β=\frac{1}{kT}$ を用いました。