【大学院試験対策】格子エネルギーの求め方

化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる例題を掲載しています。

どの例題も典型的な問題であり、さらに出題されている数値をごく簡単な値に調整しているため、計算に時間をかける必要は不要です。

その分、厳密な値ではないのに注意してください。

今回は物理化学、化学熱力学の中から格子エネルギーというテーマを扱っていきます。

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格子エネルギーの計算

格子エネルギーは、結晶を構成する原子や分子、イオンが気体の状態から固体結晶になるときのエネルギーのことを言います。

別の見方をすると、結晶をばらばらの気体にするときに必要なエネルギーです。

この格子エネルギーの計算は大学院試験に限って言えば、大きくわけて二つの方法があります。

ボルンハーバーサイクルを用いて格子エネルギーを求める

ボルンハーバーサイクルはヘスの法則の応用として高校化学で学習する参考書などでもよく出題されているものです。

ボルンハーバーサイクルでは、各反応に関してサイクルを一周すると、エネルギーの相変化が0になります。

そのため、下図のような図を描くことによって、総合的なサイクルから格子エネルギーを求めることができます。

下図は、NaCl結晶の格子エネルギーを求めるときの図です。

wikipediaから引用したものですが、ボルンハーバーサイクルときによく見る図です。

このときの、塩化ナトリウムの格子エネルギーを式で表すとすると、次のようになります。

格子エネルギーの昇華熱解離エネルギイオン化エネルギー電子親和力+生成熱

img

wikipediaより出典

マーデルング定数を用いて格子エネルギーを求める

マーデルング定数とは、結晶構造の形に依存した定数であり、このマーデルング定数を用いることで格子エネルギーを求めることができます。

マーデルング定数を用いて格子エネルギーを求めるときには、次の式を用います。

次の式は格子エネルギーを表しており、

ここではアボガドロ定数であり、がマーデルング定数、は真空の誘電率、は電気素量である。

また、は、陽イオンの電荷で、は陰イオンの電荷です。

は、イオンの大きさに関連した値になることが知られており、陽イオンと陰イオンの平均の値を用います。

この式は、クーロンの法則からきておりマックスボルンにより導出されました。

例題

それでは、実際に例題を解いてみましょう。

例題1 ボルンハーバーサイクルを用いた格子エネルギーの算出

塩化ナトリウムの格子エネルギーを次のデータを用いて答えなさい

※データは計算しやすいような値に切り上げor切り捨てしているため、必ずしも正しい値とは限りません。

名称 エネルギー[KJ/mol]
ナトリウムの昇華熱 100
塩素()の解離エネルギー 240
ナトリウムのイオン化エネルギー 480
塩素()の電子親和力 350
塩化ナトリウムの生成エンタルピー変化 -400

例題1の解答

今回の例題1では、ボルンハーバーサイクルを用いて格子エネルギーを求めます。

塩化ナトリウムのボルンハーバーサイクルに関してはページの上部にある画像を参考に値を入れていけば解答できます。

式で表すと、

格子エネルギーの昇華熱解離エネルギイオン化エネルギー電子親和力+生成熱

となります。

ただし、注意しておかなければいけない点が一つあります。

それは、生成熱と生成エンタルピーの違いです。

生成熱は反応熱であり発熱反応の場合にはエネルギーの値が正になります。

しかし、生成エンタルピーは系自身のエネルギーについての話であり、発熱反応の場合には系のエネルギーが失われると考えて負の値をとります。

よって、生成熱=-(生成エンタルピー変化) 

となり符合の正負を異にします。

このことに注意をすると、

例題2 マーデルング定数を用いた格子エネルギーの算出

塩化カリウムの格子エネルギーを次の式を用いて解きなさい。

解答は、の単位で答えなさい。

ここで、マーデルング定数は1.7とし、各定数の値を 

とする。

例題2の解答

この問題では、各値を代入することで求めることができます。

与えられた式に基づいて代入するだけなので、難しくはありませんが、単位

に気をつける必要があります。イオン間距離や電気素量がどのような単位で表されているか、解答で求められている単位が何なのかに注意をしながら解答をしましょう。

大学院試験対策におすすめの参考書

最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。

本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。

実際に大学院試験に出題された問題を見たいという方はこれらの参考書を使って対策をすることをおすすめします。

おすすめの無機化学参考書

無機化学演習 大学院入試問題を中心に

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こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。

例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。

例題に対して解説の分量が多く、とても丁寧な書き方がされているので、いきなりこの問題集を使っても問題なさそうです。

おすすめの物理化学参考書

アトキンス物理化学(上)

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アトキンス物理化学(下)

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アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。

マッカーリサイモンの物理化学の参考書とよく比較されますが、私個人としては、こちらの方が図表がきれいに並べられているため見やすいと感じています。

また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。

ただし、アトキンス物理化学 第10版の演習問題の解答は別冊になっており、とても高価です。

アトキンス物理化学第10版の解答はこちら→https://amzn.to/3vBdsgA

さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。

そのときには、下の参考書を使うとよいでしょう。

物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)

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アトキンス物理化学の演習問題の答えがないときには、こちらの物理化学演習の参考書を買うのも一つの手でしょう。

こちらは例題と解答がセットで並んでいるため、効率よく問題演習に取り組むことができます。

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