化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる例題を掲載しています。
どの例題も典型的な問題であり、さらに出題されている数値をごく簡単な値に調整しているため、計算に時間をかける必要は不要です。
その分、厳密な値ではないのに注意してください。
今回は無機化学の中から固体構造というテーマを扱っていきます。
固体構造
固体構造のまとめ
固体構造名称 | 英語での名称 | 略称 | 隣接原子数(配位数) | 充填率 |
---|---|---|---|---|
六方最密充填 | hexagonal closest packing | hcp | 12 | 74% |
立方最密充填 | cubic closest packing | ccp | 12 | 74% |
体心立方格子 | body-centered cubic | bcc | 8 | 68% |
例題1 金属の構造
銅は、立方最密充填構造をとる。また、格子定数をÅであるとする。次の問に答えなさい。
(1) 立法最密充填構造の略称(アルファベット3字)、隣接原子数、充填率をそれぞれ答えなさい。
(2) 原子半径を答えなさい。
解答
(1)
略称:ccp
隣接原子数:12
充填率:74%
(2)
立法最密充填構造ということは、単位格子は面心立方格子である。
面心立方格子では、ある面に関して対角線を考えると、という式が成立するので、
Å
例題2 単位格子中の間隙
面心立方格子の中に存在する四面体間隙と八面体間隙の個数を答えよ。
解答
四面体間隙:8
八面体間隙:4
解説
結晶格子の中で、
4つの原子に囲まれている隙間を四面体間隙といいます。
6つの原子に囲まれている隙間を八面体間隙といいます。
立方最密充填構造(ccp)でも六方最密充填構造(hcp)でも四面体間隙と八面体間隙の数は同じです。
しかし、六方最密充填構造(hcp)では構造上同時に占められる間隙に制約があります。
これらの間隙を知っておくことはイオン結晶を理解するのにとても役に立ちます。
というのも、イオン結晶は陽イオンと陰イオンの組み合わせでできていますが、片方のイオンが最密充填構造をとり、もう一方のイオンが間隙にある比率で入ることでイオン結晶を形成することが多いのです。
補足:主なイオン結晶の構造
最密充填構造 | 間隙の入り方 | 結晶構造 | 代表的な化合物 |
---|---|---|---|
立方最密充填構造 | 八面体間隙(すべて) | 塩化ナトリウム型 | |
八面体間隙(半分) | アナターゼ型 | ||
四面体間隙(すべて) | 蛍石型 | ||
四面体間隙(半分) | 閃亜鉛鉱型 | ||
六方最密充填構造 | 八面体間隙(半分) | ルチル型 | |
四面体間隙(半分) | ウルツ鉱型 |
大学院試験対策におすすめの参考書
最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。
本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。
実際に大学院試験に出題された問題を見たいという方はこれらの参考書を使って対策をすることをおすすめします。
おすすめの無機化学参考書
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。
例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。
例題に対して解説の分量が多く、とても丁寧な書き方がされているので、いきなりこの問題集を使っても問題なさそうです。
おすすめの物理化学参考書
アトキンス物理化学(上)
アトキンス物理化学(下)
アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。
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また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。
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さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。
そのときには、下の参考書を使うとよいでしょう。
物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
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