ハロアルカンなどを求核剤で反応させると、結合の開裂と同時に結合が新しく作られます。
このように同時に起こる反応を協奏反応といいます。
このような協奏的におこる置換反応の場合、反応の仕方は立体的な性質によって二種類に分かれます。
前面置換と背面置換
結論からいうと、協奏的な求核置換反応では求核剤が脱離基と同じ方から近づく前面置換と、脱離基と違う方向から近づく背面置換があります。
これらを区別する意味は、この二つの違いによって立体的な性質、とくに光学活性に違いがでるからです。
さらに言うとこの光学活性の違いから反応の仕方や生成物が判断できるので分析的に有機化学合成を行う時に役に立つでしょう。
それでは、前面置換と背面置換のそれぞれを詳しくみていきましょう。
前面置換
全面置換では、求核剤が脱離基に対して同じ側から近づいて反応します。
このとき注意してほしいのは、最終生成物と反応物の立体的な構造は変化していないということです。
前面置換ではただ単に求核剤と脱離基が入れ替わっているとみることができます。
背面置換
背面置換では、求核剤が脱離基に対して反対の側から近づいて反応します。
このとき、生成物と反応物の立体構造は変化しています。もし生成物が不斉炭素元素をもち、光学活性を持っているのであれば、旋光性が逆になることを意味します。
簡単に考えるならば、背面置換では求核剤と脱離基が入れ替わったあと、立体構造が反転したとみることができます。
この立体の反転をヴァルデン反転ということもあります。
SN2反応の立体化学
結論から言うと\(\mathbf{S}_{\mathrm{N}} 2\)反応では、後者の背面からの置換となります。
なぜSN2反応が背面からの置換かというと、HOMOとLUMOというフロンティア軌道についての知識が必要です。
背面攻撃では結合性の相互作用が生じ流のに対し、前面ではそれがないため背面からの攻撃が進むという説明がされます。
詳しい説明は量子化学の説明が必要なため省略します。
まとめ
・協奏的な求核置換反応は、前面置換と背面置換の可能性が存在します。
・前面からの攻撃の場合には立体は反転しないが、背面からの攻撃では立体構造が反転します。
・SN2反応では、背面からの攻撃によって行われます。そのため、SN2反応では立体の反転(ヴァルデン反転)がおきます。