黒体輻射の問題
古典物理学では解決できなかった問題の一つに黒体輻射がある。
輻射とはエネルギーを電磁波として他の物体に伝えるものである。
すべての物体は、自身の持つ熱を電磁波として放射し続けています。
温度が低ければそれは確認できませんが、温度が上昇するにつれ放射されるエネルギーも大きくなり、光ってみえるようになる。
また、放出される電磁波の波長分布(振動数分布)はその物体によってきまる。
理想的にすべての振動数を吸収・放出する理想的な物体を黒体とし、この黒体から放射される光を黒体輻射とした。
ここで人々の関心をあつめたのは黒体輻射の温度変化の式である。
19世紀の物理学の法則から様々な式化がなされ、
$$d\rho \left( \nu,T\right) =\frac {8\pi{}k_{B}T}{C^{3}}{}\nu^{2}d\nu$$
というレイリー・ジーンズの法則が得られましたが、これは高振動数領域で、実際の測定値とずれていた(紫外破綻)。
このことは、それまで絶好調だった19世紀の物理学界において、古典物理では説明できないものがあるということがわかった最初の事例である。
黒体輻射の式化の謎の解決
黒体輻射の説明に成功したのは、プランクという人物であった。
マックス・プランク
ドイツの物理学者。「量子論の父」とも呼ばれている。
エネルギーの量子仮説で1918年にノーベル物理学賞を受賞。
これまで、解決できなかった黒体輻射の謎をマックス・プランクはプランク定数hを用いて解決した。
これまでの古典物理学では、位置や運動量やエネルギーといった観測量は、連続的な値をとるという暗黙の了解のもとにあった。
プランクは、エネルギーを連続ではなく、振動数の整数倍のとびとびの値をとるという量子仮定をおこなった。
そのときの比例定数が、hであり、エネルギーの式はこう書かれます。
$$\begin{aligned}E=nh\nu \ \left( n=1,2,3\ldots \right) \end{aligned}$$
そうやってつくられたプランクの黒体輻射に関する温度変化の分布の式は、
$$\rho _{\nu}\left( T\right) d\nu=\frac {8\pi h}{c}\frac {v^{3}d{}\nu}{e^{\frac{h{}\nu}{K_{B}{}T}}-1}$$
と表される。
当時、この古典物理学を無視したプランクの黒体輻射の式化をほとんどの科学者は認めていなかった。
ところがこの量子化を用いたアインシュタインの光電効果の説明によってこの業績が認められることとなる。