【大学院試験対策】熱力学の大事なところを最初からざっと説明します!

化学系の大学院の試験を受ける人にとって、物理化学のとりわけ熱力学の分野はとても大切です。

しかし、出てくる状態量や式が多すぎて整理がついていない人もいるかと思います。

今回は、熱力学の要点をまとめ、思い出すためにも、これから学習する人のためにも最初からざっくりと化学熱力学を説明したいと思います!

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熱力学の大事なところを最初からざっと説明します!

熱力学について、まず知っておきたいことは物質を巨視的に見ること微視的に見ることを使いわけるということです。

巨視的にみるとは、大きなくくりで見るということです。

つまり、一つ一つの分子ではなく分子全体の塊でみるのです。

例えば、分子一つ一つの運動の速さは違うので、それらが持つエネルギー、つまりは温度も一様ではないはずです。

しかし、それを総じて温度と私たちが呼ぶのは、分子全体を巨視的に見たうえで決められたものなのです。

温度や圧力、体積などを用いた熱力学は巨視的に見るということなのです。

逆に分子一つ一つに着目した分子運動論などは物質をミクロに(微視的に)みている学問なのです。

 

熱力学第一法則についての説明

熱力学第一法則は、ひとことで言えばエネルギー保存則です。

高校の化学でも習う次の式が熱力学第一法則です。

高校の化学では、このWの符合が問題にされることが多く、気体が”した”仕事やら”された”仕事やらで困惑した人も多いのではないでしょうか。

ここでは、Wは”した”仕事になっています。気体が仕事をする分、内部エネルギーが減っていると考えると理解しやすいです。

可逆過程と不可逆過程

化学熱力学、ないし物理化学を学習するうえで、最初に躓きがちなのがこの可逆過程と不可逆過程です。

可逆過程では成立する。というように書かれていても、そもそも可逆過程が何なのかを理解できていないことが往々にしてあります。

可逆過程を別の表現で言うと、準静的過程です。

準静的過程とは、系の状態(圧力や温度や体積)を長い時間でゆっくり少しずつ変化させることのできる過程です。

このようなことを無限小での変化と言ったりもします。

ゆっくり変化できるということは、少し前の状態と少し後の状態はほとんど区別されないということです。

この状態では平衡が保たれた状態であり、そのために可逆過程ともいわれるのですね。

逆に不可逆な過程はどのような過程かというと、一つの例として自由膨張があります。

自由膨張は、外圧がない状態で気体が自発的に広がっていく現象です。

外圧がない状態であると、気体は急激に体積が変化するため無限小での変化ではなくなります。

これは平衡が崩れた状態で反応が進んでいるために不可逆な過程ということになります。

エンタルピーについて

エンタルピーという概念も高校のときにはなく難しい概念です。

与えられた熱が系にもたらす影響を考えるとき、

もしも、体積一定の状態ならば、で、かつになるので、となり、内部エネルギーの変化だけで十分に表現できます。

しかしながら、化学反応は通常、圧力一定の状態で行われます。

そのため、エンタルピーという概念を作りました。

このエンタルピーを内部エネルギーと圧力、体積を用いて表すと

という式で表されますが、正直この式はあまり用いません。

この式を微分量で表すと、

となり、

ここで熱力学第一法則より

 (でないのは状態関数ではないから。)

これら二つを用いると、

よって圧力一定のもとでは、

となり、エンタルピーの変化によって熱量の変化を表せることになります。

エントロピーについて(熱力学第2法則)

エントロピーはエンタルピーと名前が少し似ているため、それらの違いについて考える人も多いですが、そもそもとして全く別のものだと考えてよいでしょう。

エンタルピーは熱のやりとりについて特にその値について系での変化を定量的に扱うものだったのに対して

エントロピーは平衡でない状態のときについて反応の方向を決めるためのものです。

平衡でない状態というのがポイントで、平衡であるとき、準静的過程のように無限小での変化が可能になります。

しかし、平衡ではない状態では急激な変化が伴い、無限小での変化には収まりません、

つまり、平衡ではない状態から起こる自発的な変化は不可逆反応とも言えます。

この自発的な変化の方向を知るための指標がエントロピーなのです。

 

ギブズエネルギーについて

ギブズエネルギーは化学熱力学や生物化学などでもよく出てきます。

ここではエントロピーとの違いを抑えておくことが大切です。

エントロピーも自発的な変化の方向の指標でしたが、大事なのはエントロピーはある系だけを見ているということです。

反応は系と外界で構成されていますが、系のエントロピーが変化したとき、外界のエントロピーも変化します。

閉鎖系ならば外界について考える必要はなく、反応の方向性も系のエントロピーだけで十分でした。

しかし、閉鎖系ではない場合、外界のエントロピーの変化が負であるとき、系のエントロピーと外界のエントロピーを総合したものが全体の反応の自発性の基準となります。

大学院試験の問題でも系のエントロピー変化と外界のエントロピー変化を求めさせる問題が時々ありますね。

とはいうものの毎回、系のエントロピーの変化と外界のエントロピーの変化を別々に求めるのは少し面倒くさいですね。

そこでこれらをギブズエネルギーという指標としてまとめることで、外界のエントロピー変化も合わせた指標として系を見ることができるようになります。

熱力学の基本式

さきほどまでの話をまとめると、熱力学第一法則はエネルギーの保存則を表しており、熱力学第二法則は自発的な反応の方向を表しています。

これから示すのは熱力学第一法則と熱力学第二法則を結びつける式です。

これを熱力学の基本式と呼んだりもします。

閉鎖系での可逆反応

この式を導出することでこの式の意味を考えてみましょう。

まず、熱力学第一法則から

可逆反応であると仮定すると、エントロピーの定義から

また、

これらを用いて先ほどの熱力学第一法則の式を書き直すと、熱力学の基本式が導出できる。

この式は可逆反応という条件で導きましたが、この式は実は不可逆反応でも利用できる式になっています。

これ以外にも熱力学の基本式があり、これら4つを用いて問題を解いていくことになります。

 

4つの熱力学基本式

4つの熱力学基本式のごろ合わせ

僕流のゴロ合わせを置いておきます。

もっと覚えやすい覚え方があればおしえてください。

 

う(U)まい(-)パ(P)ブ(V)で楽(T)しい(S)な

へー(H)ぼん(V)パパ(P)のT(T)シャツ(S)

あ(A)まい(-)パブ(P)で毎度(-)でし(s)た(T)

がん(G)ば(V)るパパ(P)が舞(-)をし(S)た(T)。

大学院試験対策におすすめの参考書

最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。

本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。

実際に大学院試験に出題された問題を見たいという方はこれらの参考書を使って対策をすることをおすすめします。

おすすめの無機化学参考書

無機化学演習 大学院入試問題を中心に

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こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。

例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。

例題に対して解説の分量が多く、とても丁寧な書き方がされているので、いきなりこの問題集を使っても問題なさそうです。

おすすめの物理化学参考書

アトキンス物理化学(上)

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アトキンス物理化学(下)

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アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。

マッカーリサイモンの物理化学の参考書とよく比較されますが、私個人としては、こちらの方が図表がきれいに並べられているため見やすいと感じています。

また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。

ただし、アトキンス物理化学 第10版の演習問題の解答は別冊になっており、とても高価です。

アトキンス物理化学第10版の解答はこちら→https://amzn.to/3vBdsgA

さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。

そのときには、下の参考書を使うとよいでしょう。

物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)

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アトキンス物理化学の演習問題の答えがないときには、こちらの物理化学演習の参考書を買うのも一つの手でしょう。

こちらは例題と解答がセットで並んでいるため、効率よく問題演習に取り組むことができます。

 

 

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