化学系の大学院試験直前の対策として、大学院の試験に出題されうる用語やポイントについて説明します。
というテーマを扱っていきます。
エーレンフェストの分類とは?
今回はエーレンフェストの分類についての説明をしていきます。
エーレンフェストの分類法をウィキペディアで調べてみると、次のような説明があります。
ポール・エーレンフェストの分類法では自由エネルギーの温度あるいは圧力の n 階微分が不連続点を有する場合を n 次相転移と呼ぶ。例えば、 1 階微分が不連続点を有する場合を一次相転移、2 階微分が不連続点を有する場合を二次相転移と呼ぶ。(wikipediaより)
この説明は少し難しく内容が分かりづらいので、もう少しかみ砕きながら説明したいと思います。
不連続点を有する場合とは
n階微分が不連続を有する場合とはなにか説明します。
ある区間で連続とは関数f(x)に関して、すべてのをその区間において満たしていることを言います。
これをもっと簡単に言えば、その関数をグラフで書いたときに、グラフのどこかで切れていないということです。
つまり、不連続点を有するとは、どこかでグラフが途切れていることを言います。
自由エネルギーのn階微分とは
数学を学習している方なら説明は不要であると思いますが、n階微分( n 次導関数)とは、
次の定義式で示される導関数の定義を特定の回数繰り返して遂次微分したものです。
つまり、自由エネルギー(ここでは化学ポテンシャル)温度についてのn階微分とは、次のようなものです。
n階微分が不連続点を有するとはどういうことか。
それでは、この自由エネルギーについてのn階微分が不連続とはどういうことかを説明します。
例えば、1階微分で考えていきます。
ある相1での温度についての1階微分は次のようにあらわされます。
これは、ギブズエネルギーの熱力学基本式からわかるように、モル体積と同じなので、
またある相2での温度についての1階微分は
となります。
融解や蒸発、昇華などの状態変化では相1と相2の体積は基本的には同じにはならないので、これらは異なっているものであり、これらの差は、転位体積になります。
化学ポテンシャル(自由エネルギー)の勾配が相1と相2で異なるということは、化学ポテンシャルが相をまたぐとその化学ポテンシャルの勾配は、転位温度をまたいで不連続的に変化するということになります。
また、このように自由エネルギーの1階導関数が不連続になる転移のことを1次相転移といい、1階導関数は連続でありながら、2階導関数は不連続な転移を2次相転移といいます。
これがエーレンフェストの分類です。
圧力変化についての自由エネルギーの導関数の不連続性
先ほどは、温度変化に対する自由エネルギーの変化を考えましたが、今回は圧力変化を考えてみましょう。
こちらも全く同様なことが言えます。
こちらは式だけ羅列して書くと、次のようになります。
エントロピーの変化やエンタルピーの変化は状態変化では0にはなりません。
つまり、先ほど同様、化学ポテンシャル(自由エネルギー)の勾配が転移点で不連続になるということがわかります。
まとめ
エーレンフェストの分類とはエーレンフェストが決めた相転移についての分類です。
エーレンフェストの分類では、自由エネルギーの1階導関数が不連続になる転移のことを1次相転移といます。
エーレンフェストの分類では、1階導関数は連続でありながら、2階導関数は不連続な転移を2次相転移といいます。
最後に大学院試験対策におすすめの参考書を紹介します。
本サイトでは基本的な問題の解説をしていますが、著作権などの都合上、問題設定や数値はオリジナルの問題になっています。
実際に大学院試験に出題された問題を見たいという方はこれらの参考書を使って対策をすることをおすすめします。
おすすめの無機化学参考書
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
無機化学演習 大学院入試問題を中心に
こちらの参考書は、原子構造、分子構造、固体構造といった物質の構造や酸化還元や酸塩基などのベーシックな反応に関する問題を取り扱っています。
例題には出題もととなる大学院の名前も書いてあるため、自分の受験する大学院の難易度と比較しながら問題を解くことができます。
例題に対して解説の分量が多く、とても丁寧な書き方がされているので、いきなりこの問題集を使っても問題なさそうです。
おすすめの物理化学参考書
アトキンス物理化学
アトキンス物理化学(上)
アトキンス物理化学(下)
アトキンス物理化学は、物理化学の参考書としてはよく用いられています。
マッカーリサイモンの物理化学の参考書とよく比較されますが、私個人としては、こちらの方が図表がきれいに並べられているため見やすいと感じています。
また演習問題が多く、これ一冊で大学院の対策ができることもいい点です。
ただし、アトキンス物理化学 第10版の演習問題の解答は別冊になっており、とても高価です。
アトキンス物理化学第10版の解答はこちら
さらに、解答はすべて英語になっているので、演習問題で解答が必要な人にとっては少々演習がやりにくく感じるかもしれません。
そのときには、下の参考書を使うとよいでしょう。
物理化学演習 1―大学院入試問題を中心に (化学演習シリーズ)
アトキンス物理化学の演習問題の答えがないときには、こちらの物理化学演習の参考書を買うのも一つの手でしょう。
こちらは例題と解答がセットで並んでいるため、効率よく問題演習に取り組むことができます。